時盛 郁子
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賑やかな紙屋町エリアから相生橋を渡ると、目の前にまっすぐに続く相生通り。この通り沿いのビルの3階に、伝統と新しさが混ざり合う素敵な空間が広がっているのを知っていますか?
本店の名前「Piroleikki」は広島をもじった「ピロ」とフィンランドで庭に建てられる子ども用の小さな家「レイキモッキ」から取り、「広島の小さな家、お店」をイメージ。2号店を開くにあたって文字を並べ替え「Pier Lokki」という店名が生まれたそうです。
本店では北欧雑貨をそろえるのに対し、「Pier Lokki」では日本の伝統工芸や民藝などの作品を扱っています。コンセプトは「伝統を愉しむ、モダンを愉しむ」。ガラス食器や陶器、ランプシェードやフラワーベース……。バラエティに富んだ品ぞろえながら、店内には統一感のある落ち着いた空気が漂います。
作品は日本国内の作家さんのものが多いですが、棚やテーブルなどの什器は北欧のものにこだわります。ずらりと並ぶ雑貨の奥、壁に立てかけられているのは約100年前のリトグラフ(3300円)。合成インクではなく天然顔料が使われているため、今も鮮やかな色を楽しめるそうです。
「もともと工芸というのは『模倣』の文化です。その中で、昔から使ってきた材料や技術が時代とともに入れ替わってくる。まったく同じ形を模倣していても、違うものが仕上がってくるのが工芸の面白いところだと思います」と話すのは、店主の橋本定幸さん。例えば、棚にずらりと並ぶ陶器のマグカップやスープカップ、オーバルのプレート。「陶芸の中に西洋の文化が溶け込んでいますよね」という言葉に、確かにとうなずきます。
「モダンの中に伝統がある作品を僕は『現代工芸』と呼んでいます。新しいものや変わっていくものを受け入れる日本人の懐の深さが、この楽しさを生んでいると思います」
思わず「可愛い!」と声が出たのは、長野県の降幡未来さんの「鳥シリーズ」。テキスタイルを専攻していた作家さんの作品で、染色を思わせる淡い色合いや美しいグラデーションに目を奪われます。表情も一匹ずつ違うので、ぜひお気に入りを見つけて。
チェスのような形が特徴のライトは、広島に住むイギリス人作家、トマス・カークランドさんのもの。「日本人の作家さんとはまた違うセンスのデザインが個人的に気に入っています。ケーキ台もデザインされていて、飾り台としても使っていただけます」
店内の一部のスペースでは、毎月2~3人の作家さんの展示会が開催されています。取材時の展示は福井県のガラス工芸作家、森谷和輝さんのもの。お店の外はすっかり冬ですが、白さが特徴のガラス作品からはどこか温かみも感じます。
「一見してガラスなのか分からない素材感がおしゃれですよね」。きらきらと光って見えるのは、実は蛍光灯をリサイクルした材料。吹きガラスではなく、一つずつ型を作って溶かしたガラスを流し込み、型を割って取り出す「パート・ド・ヴェール」という方法で作られているそうです。
展示会の度に橋本さんが制作するダイレクトメールは、飾っておきたくなるような美しさ。入り口にはこれまでの展示のダイレクトメールがびっしりと貼られています。「並べたり包んだり、大変なんですよ」と話す橋本さんですが、ひとつひとつの作品を丁寧に伝えていきたいという思いがひしひしと伝わります。
「Pier Lokki」ではほとんどの作家さんと直接取引を行っているそうで、これまでに関わってきた作家さんは50人以上。「自分がお金を出して作品を買いたい、と思う作家さんに声をかけてきました。その出会いを積み重ねながらここまで来たという感じです」。
仕事として雑貨に関わり始める前は、東京でIT系のシステムエンジニアとして働いていた橋本さん。現在とは全く違う業種ですが、当時は近所の神社で開かれる手作り市によく足を運んでいたそうです。お店ではその手作り市で出会ったという長い付き合いの作家さんの作品も並んでいますよ。
「作家さんたちはみんな独立して、自分の才能一本でやっていくっていう人たちです。そんな中、展示ができるギャラリーは広島でもずいぶん減ってきています。作品をアナウンスする場として、作家さんのためになっていると嬉しいですね」。
路面電車が行き交う十日市らしい景色を見下ろす場所にある、「現代工芸」の心地よい空間。階段を上がってぜひ、訪ねてみてくださいね。
桟橋カモメ Pier Lokki
広島市中区本川町2-5-12 鳥越ビル3F
【定休日】水曜日
【営業時間】11:00 – 17:00
TEL:050-3559-7505
ホームページ:https://pierlokki.com
Instagram:@pierlokki
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