【AIR P°CKET.】街に、生活に、じんわりなじむアイデアを。

雑貨店
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時盛 郁子

時盛 郁子

食べることと読み書きと、予定をぎゅうぎゅうに詰め込んだ旅が好き。

電車通りから一本奥の道に入ると、街の雰囲気がぐっと静かになる十日市。本川町の電停から徒歩3分ほどの場所にある「AIR P°CKET.」では、そんな街の空気や日常生活に心地よく寄り添う雑貨が販売されています。

的場町から十日市へ 今年で移転10周年

入り口では爽やかなグリーンがお出迎え。

以前は広島市南区的場町に店舗がありましたが、2012年3月に現在の場所へ。十日市へ移転して、今年で10周年を迎えました。オーナーでデザイナーの大畠祐介さんは、友人に話を聞いたり、自転車で街を回って自分の肌で空気を感じたりしながら移転先を考えたそうです。

「的場町のときは店舗が2階にあって、いつか小さくてもいいので路面店をと思っていました。中心部から少し離れていて、ゆっくりと自分のスタイルでお店ができるような場所がないかなって。十日市は僕にとって知っているようで知らないエリアでしたが、移転当時は古い建物や純喫茶もあって、中心部から川を渡るとちょっと街の空気が変わるのもいいなと思いました

ガレージのような床と木のぬくもりがメリハリを作り出す店内。壁紙や照明を変えたり、棚を作ったり、大畠さんが自らカスタムした部分もある

 

シンプルな中に、くすっと笑いを

店頭に並ぶのは、大畠さんが自らデザインした雑貨や家具が中心。それぞれ「UNDERLAND.」「LIME.」「X.Y」の3つのブランドの商品として展開されており、グラフィックから家具まで幅広い商品がそろいます。記号やマークをモチーフにしたシンプルなデザインの中に光る、くすっと笑えるエッセンスが大畠さんのデザインの特徴です。「AIR P°CKET.」の店名にも、「空気のように日常になじむ商品が詰まったポケット」「エアポケット(乱気流)のようなトラップや驚き、わくわくを提案したい」という思いが込められています。

グラフィックのブランド「UNDERLAND.」のおすすめ商品は、「NMトート」(2,420円)。黒い文字の部分は、何と書いてあるでしょう?

「NMトート」(2,420円)/UNDERLAND.

実はこのデザイン、「何も書いていない」が正解です。「NMはNo Meaning、意味はないの頭文字なんです。何か文字が書いてあるように見えて、ペンできゅきゅきゅと描いただけの形をデザインにしています」

右端のドットは、大畠さんがイラストを描いたときのサインのようなもの。探してみると、お店のあちこちにドットが隠れています。

ドットはもちろんお店のロゴにも。「AIR P°CKET.」のAを三角の図形や工事現場のコーンなどに見立てている。「印象に残りやすいような形にしています」。

「家のKEY RING」(2,640円)/LIME.

「家のKEY RING」(2,640円)は、オリジナル家具のブランド「LIME.」の商品のひとつ。販売を開始してから約10年になる人気の商品です。アルミニウム製のため手に取ると驚くほど軽く、冬でも冷たくならないのがポイントです。

「最初は家の鍵をつけるキーホルダーが家の形だと可愛いかな、というところからデザインを始めました。平面的なデザインに厚みを持たせることで、鍵を付ける輪っかをかけられるようにしています」

「MUG3(マグスリー)」(2,860円)/X.Y

「X.Y」は大畠さんと広島県内の作家や工房がコラボした雑貨のブランドです。「MUG3(マグスリー)」(2,860円)は呉市川尻町の岩屋工房と制作したもので、「AIR P°CKET.」で販売するマグカップとしては今回のものが三作目だそう。

「普通のマグカップよりは持ち手が少し大きめで、しっかり持てます。少しおもちゃっぽく見えるデザインを意識しました」

店内では大畠さんがセレクトした岩屋工房の陶器も手に取ることができます。

 

そして、「AIR P°CKET.」で一番人気の商品がこちら。

「おばけ」(1,650円~)/LIME.

透明なオイルで仕上げることで木の色を生かした「おばけ」は、ひとつひとつ異なる木目が魅力のオブジェです。一番小さいおばけはSimon(サイモン)、真ん中がMark(マーク)、一番大きいものはLewis(ルイス)と頭文字がS、M、Lになっていて、名前にも遊び心が光ります。

「おばけをすごく簡略化した形で、重心を少しずらしています。そうすることで向きを変えるとちょっとそわそわしたりとか、おばけ同士の関係性を想像させたりすることもできる。そんな動きが付けられるくらいのシンプルなデザインにとどめています」

置く場所や見る方向によって「おばけ」の目の部分に入る光が動き、まるでくるくると表情が変わるよう。ぜひ、何匹か並べて楽しんで。

 

「とっておき」をデザインする 表札や家具のオーダー

また、「AIR P°CKET.」では店頭に並んでいる商品を購入するほか、表札や家具、お店のロゴデザインなどをオーダーすることもできます。

ころんとした松のイラストがかわいらしい表札。価格については依頼時に問い合わせを。(画像提供:AIR P°CKET.)

表札のオーダーは「お店の看板をデザインするときのアイデアや形を、個人の住宅でも生かせたら楽しいのでは」という大畠さんの思いから始まったもの。名字にまつわるイラストをあしらったり、表札をかける位置を生かしたりしたデザインは、玄関を楽しく彩ってくれそうなものばかりです。相談や依頼は、InstagramのDMやメールで受け付けています。

店内には家具の見本も。家具のオーダー相談は店頭で受け付けている。

 

「好き」から生まれた心地よいデザイン

雑貨をデザインして販売し、表札や家具のオーダーも受ける。今では幅広い商品のデザインを手掛けている大畠さんですが、最初はお店を開くことを全く想像していなかったそうです。

「高校を卒業して、舞台や映画の特殊メイクなどを学ぶ専門学校に進みました。専門学校でメイクやアートの勉強をするのは、当時はまだちょっとマイノリティーな考えだと思われていたかもしれません。でも自分がやりたいことを見つめ直したときに、絵を描いたりして自分を表現するのが好きだったんですね」

オーナーでデザイナーの大畠祐介さん(画像提供:AIR P°CKET.)

デザインを始める転機になったのは、20才のときに初めて開いた個展だったそう。「学校の課題でデザインコンテストに応募して入賞した賞金を、何か記念になることに使おうと思って」。大阪のギャラリーを借り、コツコツ描きためていたイラストを展示しました。

「自分が描いていたのはイラストでしたが、段々と自分は『デザイン』をしていることに気付くようになりました。分かりやすく、楽しく『伝えたいこと』をぎゅっと凝縮するのが得意なんだなって

しかしすぐには仕事に繋がらず、大畠さんは何度も個展を開く中で、お客さんの反応を確かめながら試行錯誤を繰り返したのだと言います。どうすればこれが仕事になるか。自分はどうしてこれを作るのか。平面だけでなく立体の作品も手掛けていたため、「何がやりたい作家なのか?」と疑問に思われることもあったそうです。

「でも僕は『いろいろやってもいいじゃないか』と思っていたんです。一つの素材や表現に決めたくなくて。自分が面白いと思った表現方法を喜んでくれるお客さんや自分を信じて、自分のアイデアを形にすることを仕事にしたいという思いでした

そうした試行錯誤を経て大畠さんが辿り着いたのが、「生活に使えるものの中にアイデアを落とし込んだ」デザイン。人差し指を引っ掛けるだけでしっかりと支えられるマグカップや、ブックエンドにもなる星のオブジェ……。「身近でありながら見たことがない」デザインは生活にそっと溶け込み、小さな喜びをもたらしてくれます。

平面的なデザインの星も厚みを持たせると自立してオブジェに。

「表現することへの責任はいつも意識しています。デザインしたり作ったりすることがゴールではなくて、できるだけ楽しい表現であるように、いつも誰か相手を思いながらデザインしています。商品も一度に多く作らず、売れて必要とされればまた追加をしてゆく。自分の中ではこのやり方が健全な気がしています」

シンプルなたたずまいの雑貨や家具はきっと、まさに空気のようにさまざまなライフスタイルに溶け込むはず。プレゼントはもちろん、普段使いのお気に入りアイテムを探しに、ぜひお店を訪ねてみてくださいね。

AIR P°CKET.

広島市中区十日市町1-5-5-1F

【定休日】火曜日・水曜日・木曜日

【営業時間】11:00-18:00

TEL:082-234-4838

ホームページ:http://www.airpocketweb.com/Shop/index.html

Instagram:@yusukeohata

@airpocket.works

Twitter:@Airpocketkarano

 

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