宮崎園子
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みなさん、はじめまして。初投稿の宮崎と申します。20年近く新聞記者だったんですがこの夏脱サラし、子育てをしながら各種物書きをしつつ、界隈をうろついています。
「現場に行って人に会って話を聞いて書く」ということばかり繰り返してきた人間にも何か地域貢献ができるかしら、とか考えながら、「きみ知ら」の扉をたたいてみました。「きみ知ら社会部」を勝手に掲げ、それっぽいノリでぼちぼち、私が大好きな街について書いていけたら、なんて思っています。
知る人ぞ知る「青い街灯」について
日が沈んだ後、十日市町電停と本川町電停の間あたりから、相生通りの北側を見ると、街の様子がちょっと違うことに、みなさんはお気づきでしょうか。
そう。街灯が青いのです!
なんとなく妖艶な。でも、相生通り北側全体がそうなっているわけではなく、限られた一部だけ。
知り合いの町内会長さんたちをたどっていったところ、「青い街灯のことなら、本川町2丁目の会長さんに聞けばわかる」と言われたので、訪ねてみました。
「あなたずいぶん昔のことを聞くね」。会長さんは言いました。「当時はたくさん取材がきた。とうとう大阪の研究所からも」。
大阪!研究所!なんだかすごいことらしい。
「グラスゴーを広島に持ち込もうとしたのよ、警察が」。会長の口から唐突に、本川町から9000キロ以上離れたイギリス・スコットランドの街の名前が飛び出しました。「街灯の色を変えたら犯罪が減ったって」
詳しい話を聞きに、広島県警本部へ
ということで、詳しい話を聞きに、広島県警本部へ。若かりし頃に事件担当記者だった筆者ですが、10年以上ぶりに訪れる場所に少々緊張するなど。
「平成17(2005)年の5月、当時の広島中央署の生活安全課員がテレビを見ていたらしいんです」。生活安全総務課の担当者がそう語り始めました。「クイズ番組かなにかで、グラスゴーで街路灯をオレンジから青に変えたら犯罪が1年で1万件減少した、みたいな番組をやっていたとかで」
出た、グラスゴー。
「それで、『これはいいんじゃないか』ってことで、中区役所に働きかけたらしい、というのが記録に残っています」
ただ、担当者いわく、母数何件から1万件減ったのかなどは不明だとか。
彼の説明によると、その少し前の平成13(2001)年、広島県内の刑法犯認知件数は5万9352件と戦後最悪の数字をたたき出していたそうです。これを受け、平成15(2003)年、官民一体となって、犯罪が起こりにくいまちづくりに取り組む「減らそう犯罪広島県民総ぐるみ運動」が始まります。
さまざまな取り組みが行われた結果、刑法犯認知件数はぐんぐん減り、平成23(2011)年には、ピーク時の半分ほどの2万5937件にまで減少。それ以降10年連続で戦後最少を更新し続け、令和2(2020)年には1万1726件にまで減りました。
「当時は危険水域だってことで、テレビを見よった警察官も『なんとかせにゃあいけん』と思ったんでしょうね。警察だけではダメ、みんなでやらんと、って」
本川町2丁目一帯はモデル地区に選ばれ、ここに導入されたそうなのです。
青い街灯は防犯のシンボル
「本川町2丁目だけで、年間17件から4件に犯罪が減った」。会長さんは胸を張ります。「ん?ここはちょっと違うぞ、って犯罪者が思うんじゃろうね」
当時の報道などを見ると、「色彩心理学で人の心を落ち着かせる効果があると言われている」という表現がありますが、警察いわく、「青にしたことによって減った、という実証効果はない」。ただ、設置による住民の意識向上や地域の連帯感の強化など、防犯に関する意識づくりから、効果はあると見ていると言います。
つまるところ、青い街灯はある意味、「減らそう犯罪」のシンボルのような存在。警察が呼びかけ、区役所が動き、住民の協力を得て導入された、ということだから。
まさに「総ぐるみ」!!
維持管理を担当している中区役所によると、「青い街灯」の正式名称は「青色防犯灯」。本川町2丁目と周辺一帯に合計55本が設置されているそうです。設置当時の報道を見ると、12ヶ所に試験的に設置し、その後対象区域を広げて増設したとか。
遠くは大阪からも視察に来たほどの珍しい「青い街灯」ですが、幸か不幸か、その後、警察の呼びかけによって広島県内で他のエリアに導入された例はなく、結果的に、本川町一帯が「(おそらく)広島で唯一」という称号を得たまま、今に至ります。
ご近所、平和大通りでは、冬恒例の「ドリミネーション」が始まりました。青のみならず、赤、黄、白とたくさんの色があって、きらびやかな彩りが緑豊かな平和大通りを包んでいます。
ちょっと足を伸ばせば、我らが「青い街灯」エリア。このあたりには、小粒でもキラっと光る飲食店もたくさんあるので、ドリミネーションついでに、青い街にもぜひ遊びに来てみてくださいね。
おしまい
宮崎園子
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